トヨタ自動車の豊田章男社長が、米WSJ(ウォールストリートジャーナル)氏に寄稿し、その中で過去の顧客に対する不十分な対応を認めるとともに、より安全な車を提供すべく具体策をすでに講じていることをアピールしました。米公聴会の直前ということもあり、トヨタにとっては戦略的な一手なのでしょう。
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個人的には、ここまでリコール問題に対する対応が後手後手だったトヨタが、この経営トップの寄稿を機に、一機に攻めの姿勢に出たように思えます。

トヨタに関わらず、グローバル企業の経営トップが発信するメッセージは、どのような媒体であれ大きなインパクトを持ちます。利害関係者の数が違うこともあり、その内容次第で企業に対する評価・見方が大きく変わってくるからです。その意味で、今回の豊田社長の寄稿は、内容・構成ともに良く練られており、非常に効果的だったのではないでしょうか。

私が感心した(好感を持った)点をいくつか挙げたいと思います。

・社長本人の個人的見解・想いをを伝えている。
引用:「すべてのトヨタ車が私の名前を付けているのだ。車が傷つけば、それはあたかも私自身も傷つくようなものだ。私は車を愛しており、(中略)ほかの誰よりも、私自身がトヨタ車が安全であることを願い、顧客がトヨタ車を運転する際には安全を実感できるよう望んでいる。」

・トヨタの過去の顧客対応が十分でなかったことを率直に認めている。
引用:「われわれがこの数年間、顧客の懸念に対し、十分に耳を傾けていなかったり迅速に反応していなかったのは明瞭だ」

・その一方、トヨタは過去長期にわたって、高い品質の車を提供し続け認められてきたことをアピール。
引用:「この20年間に様々な独立系の専門家から700を超える高品質を称える賞を受けた。自動車メーカーの中でもトップクラスの成績だ。」

・トップとして、トヨタの向かうべき方向性を提示している。
引用:「This is why I am taking the company back to basics.(私が、会社を原点に立ち戻らせようとしている理由はここにある。)」

・合わせて、既に実施済みの具体策を説明している。
引用:「ディーラーとチームメンバーは全米、および全世界でリコール車の対処を迅速に行うよう、格段の努力を払っている。また、トヨタの技術陣が解決策を厳しく検証する一方、トヨタ車の安全性をさらに確実にするため、世界的な技術コンサルタント会社エクスポーネントに電子制御スロットル・システム(ETCS)の包括的調査を依頼した。」

・今後予定している改善策を複数具体的に説明している。
例:顧客モニターチームの増員。品質管理の強化。新型モデルへの新システム搭載の約束。など。

皆さんは、どのように受け止められたのでしょうか。

先行きがどうなるかわかりませんが、今アメリカでは、トヨタの隠蔽体質が問題視されていますから、経営トップ自らがこれまでの事情と今後の具体策を説明する公聴会が直近の正念場でしょうね。