今日のODP(組織デザイン)とTOM(オペレーション)の授業は、スペースシャトル・チャレンジャー号のケースを扱いました。

1986年1月、チャレンジャー号は離陸から73秒後に空中で爆発し、クルー全員が死亡するという大惨事となりました。NASAとしては、決して起こしてはいけない最悪のシナリオとなってしまったのですが、その背景には何があったのか、どのようにすればこの最悪のシナリオを避けることが出来たのか、この悲劇から得られる教訓は何なのかについて議論しました。

事故の原因ですが、以下ウィキペディアからの引用です。

打ち上げは何度も延期され、シャトルは気温の低い地に長い間さらされていた。当日は気温が氷点下にまで下がり、固体ロケットブースタ内部に使用されるOリングの凍結で気密性が低下し、これによって高温のガスが漏れ出したことが事故を引き起こしたと見られている。発射後の映像でもブースターから吹き出る炎が確認できる。
固体ロケットブースタのOリングは一次Oリングと二次Oリングがあり[1]、仮に一次Oリングが焼損してしまったとしても二次Oリングがガス漏れを防止するはずであったが、低温でOリングが機能を十分に発揮できず、一次・二次両方のOリングが焼損してしまっていた。またOリングのみならず、接合部の構造にも欠陥があったとされている[2]。
チャレンジャー号の打ち上げ以前にも、Oリングの凍結と気密性の低下で一次Oリングや接続部を焼損する事例がコロンビア号などで数回発生していた。チャレンジャー号打ち上げ時の気温が極低温になることが予想された後、発射の13時間前に行われた会議で、ブースターの製造会社であるサイオコール社の技術者から再三指摘されたにもかかわらず、度重なる発射延期のせいもあって、NASAはそれを会議における多数決による表決で無視した。技術者は発射前に自分の忠告を無視したNASAに対する不満を書いている。
打ち上げ直後、ブースター下部の継ぎ目から黒煙が上がっているのが一部のカメラで捉えられていたが、その噴出は内部より押し出された破片によってふさがり一度は収まった。しかし上昇時の上空の気流が悪く機体が大きく振動、そのため隙間に詰っていた破片が吹き飛び、再度のガス噴出を引き起こしてしまい引火、その熱で外部燃料タンクとの接続部分が焼き切れ、シャトル右側の固体ロケットブースタが外部燃料タンク上部を直撃し、漏れた液体水素に引火したのが爆発の原因とされている。

ケースでは、以下の事実にも触れられていました。
・サイオコール社は過去に十分な実績がなかったがにもかかわらず、NASAは開発費用が安いという理由で、ブースターの委託を決定した。
・サイオコールの技術者は、53°F以下だと(爆発の)リスクがあり、打ち上げすべきでないと再三忠告した。
・しかしながら、当技術者は、危険性の裏づけとなるデータを提示することが出来ず、低温での打ち上げは経験的にすべきではないと述べるに留まっていた。
・NASAとサイオコール社の関係は、再三の延期等でぎくしゃくしており、NASA側は強い疑念を抱いており、同時にいらだっていた。
・サイオコール社の経営陣は、NASAからの強いプレッシャーを受けており、リスクを承知で、”経営判断”として、打ち上げOKをNASAに伝達した。

このように、組織間のパワーバランス/人間関係の狭間で、打ち上げの延期という形でリスクを避けることが出来たにもかかわらず、最終的には(技術的な欠陥だけでなく)ヒューマンエラーが重なり、間違った意思決定をしてしまったのです。”もし”を考えても仕方ないのですが、”もし”あの時に、”誰か”が違った行動をとっていれば・・・と思いふけってしまいます。

チャレンジャー号からの教訓としては、以下が挙げられました。
①自組織のミッションや目的に忠実たれ。
②自身の価値観に基づき、意思決定せよ。欲求ではなく、信念に基づけ。
③組織のカルチャーは、その組織の構造(structure)に勝る。
④組織上の仕組みを造るために、自分の貢献度合いを分析せよ。
⑤恐怖や臆病さからではなく、道徳的勇気に則り行動せよ。
⑥組織的危機は、一夜で訪れるのではなく、積み重ねによるものだと理解せよ。
⑦利害関係者を巻き込め。
⑧全ての情報・知識は不完全だと思え。
⑨悪い知らせに耳を傾けよ。特に悪い知らせには、なおさらだ。
⑩専門家を信用せよ。

どれも非常に示唆深い教訓です。

※当時のライブ映像