自伝というよりは、大統領任期中におきた主要イベントごとに、ブッシュが何を考え、どのように意思決定をしていったかがまとめられており、前大統領本人が著したという点で非常に重要な本といえます。

特に、911テロ直後の対応や、アフガニスタン戦争、イラク戦争について、政権内でどのような議論があり、ブッシュがどのように対応したかについては非常に興味深い内容になっています。

当時から報道されていた通り、チェイニー副大統領をはじめとする新保守主義といわれる人たちが、911テロにこぎつけイラクへの侵攻を提案し、パウエル国務長官が反対派で、コンディ・ライスが慎重派だったなど、実際の政権内のパワーバランスがありありと描かれています。

政権内は数々の問題に対して、決して一枚岩には程遠い状態だったわけですが、ブッシュは意思決定を続けていきます。

ブッシュ前大統領は、イラク政策やカトリーナ対策などにおいて、失点の多い大統領で、個人的にもいままで全く評価してこなかったのですが、彼の著書を読む限り、彼の意思決定の多くは、バランスのとれた適切なものだったことがわかります。

周りが過激な提案をした場合でも、状況を見極め、冷静な判断がなされていました。彼はあまりスマートな人物ではないのかもしれないけれど、人材マネジメントや人心掌握に関しては、かなり秀でた能力を有していたことも重要な点でしょう。

政権の主要ポストの人選はかなり慎重にかつ、最適な人物をつけるよう最大限の努力をし、なにより政権内には偏った思想の人物でまとめることはなく、有能だが多用な意見をもつ人たちで構成させ、バランスをとったなど、人事についてはかなりの感度を持っていたんですね。

アメリカ政治について興味のある人にはオススメです。