クリントン政権で政府要職を歴任し、ハーバード大学ケネディスクールの学長を勤めた、親日家でもしられるジョセフ・ナイ氏新著「リーダー・パワー」を読みました。
ジョセフ・ナイといえば、私が大学生のころアメリカ政治のゼミに入っていたので、第3次東アジア戦略報告書(ナイレポート)の影響についてあれこれ議論したのが懐かしい。
ナイ氏とえば、少し前だと”ソフト・パワー”の提唱者として有名で、米国は経済力や軍事力をベースにしたハード・パワー主導の国家から、文化や価値観、政策の魅力などの集合体であるソフト・パワーを有効に活用する国家であるべきだと論じてきた。
この本の面白さは2つ。
1つは、ハードパワー、ソフトパワーの議論を国家の軸から、人間の軸に移し、リーダーシップをソフトパワー、ハードパワーの概念を使って分析、論説している点。彼の専門分野である、政治家だけが対称でなく、多くの経済人(ビジネスマン)も登場するので、興味深い。
もう1つは、ソフトパワーだけでなく、ハードパワーも状況に応じて有効に利用すべきであれば、双方の融合であるスマートパワーの活用が肝であると強調している点。(スパートパワーは、現クリントン国務長官が演説の中でも使用していました)
少し中身を紹介すると、彼の主張するリーダーシップとは以下の6つのスキルで構成される。
■ソフトパワー
・EQ:人間関係を管理する能力
・コミュニケーション:説得力ある言葉、例示
・ビジョン:フォロワーを引き寄せる力
■ハードパワー
・組織能力:報酬と情報システムの管理運営
・マキアヴェリズム的スキル:脅迫、買収、交渉の能力
■スマートパワー
・状況を把握するIQ:環境の理解、トレンドをつかむ力
難点は彼独特の造語が用いられるので、その抽象概念を理解するのが大変。
米国の政治化や経済人にそこまで詳しくないので、描写されている人の事前知識がないと、今ひとつ説得力をもたない。といったところです。