新しく人事評価制度を導入した後は、評価者研修を行い、新制度のプロセスや評価ルールを評価者に落とし込んでいくことが必要です。
そこで、今回は、評価者研修の重要性と効果についてまとめたいと思います。

なぜ評価者研修が必要か

新しく人事評価制度を導入するということは、(程度問題はありますが)それまでと人事評価の基準、プロセス、評価者の役割が大きく変わることになります。組織が大きくなるにつれ、中間管理職層が評価者となり、評価プロセスの中で重要な役割を担うようになってきます。

そうした状況において、評価者研修を十分に行わないまま、実際の評価業務を行うことになれば何が起こるでしょうか?

評価者により、評価制度に対する理解の差が大きいため、「評価エラー」が起きるのです。正しい評価が行われないことで、一見評価実務が前に進んでいるように思われますが、結果として現れる評価の公平性や公正性に問題がおき、折角新制度を導入しても、組織全体としては適正な評価が行えていない状態が続くのです。

評価者研修の目的と効果

評価者研修の目的は、大きく2つあります。

1.評価者が、評価基準、評価プロセス、評価方法に対する理解を深める。
2.評価者が、評価者の役割(重要性)と、評価者として必要な心構えを理解する。

特に、一次評価者が評価プロセスの中で重要な位置付けとなることが多く、その人たちが、新評価制度の内容と、評価者の役割(重要性)を正しく理解することが、評価制度を適切に運用するための第一歩となるわけです。

評価者研修の効果として、「公平・公正な評価が行われるための土台(共通認識・評価スキル)が築かれている状態」に一歩近づくことになります。残念ながら、評価者研修を行うだけで、一足飛びに公平・公正な評価が行われるための土台が築かれることはありません。組織としての評価スキルは、年単位で磨かれているものなので、時間をかけて継続していくことが大切です。

評価者研修で伝えるべきこと

新評価制度の評価基準、評価プロセス、評価方法は勿論ですが、新制度の内容以外で、評価者に伝えるべきものについて触れたいと思います。

まずは、評価者の役割です。

【評価者の役割】
公正・公平な評価を行い、適切な処遇につなげることで、
社員のモチベーションを向上させるとともに、
自社が求める人財を育成すること。

単に、適切な評価実務を担えばいい、というわけではないことがポイントです。「動機付け」と「育成」も、評価者の重要な役割であることを忘れてはいけません。

次に、評価者が留意すべき評価エラーについてです。

留意すべき評価エラー
①ハロー効果 「1つの良い面につられて全て良く評価しがち・・・」
②中心化傾向 「当り障りのない無難な評価になりがち・・・」
③期末効果 「評価直前の出来事に目を奪われがち・・・」
④寛大化傾向 「部下の手前、甘い評価になりがち・・・」
⑤対比誤差 「自分の得意分野は厳しく、苦手分野は甘くなりがち・・・」
⑥論理誤差 「事実を見ずに、論理だけで評価しがち・・・」

評価は、感情がある生身の人間が行うものですので、実際、このような評価エラーは非常に多く発生しています。評価者が、こうした評価エラーがあることを踏まえ、冷静に客観的・中立的な評価ができるようになることが望ましいのです。