ビル・キャンベルの名は、日本ではほとんど知られていないと思う。
私は、アップルの取締役に長らく名を連ねている人物として認識はしていたが、どういうキャリアの人物で、どういった影響力がある人間なのか、といったことについては、ほとんど知らなかった。
・・・この本(1兆ドルコーチ)を読むまでは・・・
正直、ヘンテコなタイトルだと思う。
「1兆ドルコーチ」
パッと意味がわからないし、仮に1兆ドルの価値があるコーチの話なのだとして、そんな大それたことを吹聴するコーチなんて胡散臭い、と最初はこの本を敬遠していました。
とは言え、本屋でちょこっと立ち読みしてみて、中身にぐいぐい引き込まれる自分がいました。
ビル・キャンベルは、フットボールのコーチであり、インテュイットのCEOであり、スティーブ・ジョブズの盟友であり、グーグルを世界的企業に導いた名コーチである。
この本は、ビル・キャンベルのキャリアを追いつつも、名コーチとして、世界最高の企業で働く経営幹部達に対して、どのようにふるまい、どのように叱咤し、どのように助言し、コーチングしてきたか、彼のコーチとしての類稀なる才能を垣間見るための貴重な内容になっている。
この本の、ある章のタイトルは、こうなっている。
パワー・オブ・ラブ 〜ビジネスに愛を持ち込め〜
この章の中から、気に入った節を引用したい。
ビルのハグと悪態のスタイルが受け入れられたのは、彼の行動の全てが心の奥底から、愛情から出たものだったからだ。(中略)彼のハグとキスの意図を誰もが一点の曇りもなく理解していた。君らを気にかけている、愛している、と伝えるためだ。
ビルはチームのコーチであり、人間を愛した人だった。どちらか一方だけではダメなのだと、彼に教えられた。このことも学術研究によって裏付けられている。ビルが示したような「慈愛」(思いやりと慈しみ)に満ちた企業は、従業員満足度とチームワークが高く、欠勤率が低く、チームの成績が高いことが示されている。
私たちがビルから学んだこと、それは「愛してもいい」ということだ。チームメイトは人間であり、彼らの職業人の部分と人間の部分のあいだの壁を破り、愛をもってまるごとの存在を受け止める時、チーム全体が強くなることを学んだ。
こういう人と一緒に働けたら、本当に楽しいし、幸せなのだろうと思う。