コロナショックで多くの企業がテレワークを取り入れましたが、中でも先進的な取り組みを行い、それらが他社にとって参考になる会社があります。
今回は、テレワーク先進事例の代表例といえるGMOインターネットを取り上げたいと思います。

GMOのテレワークの取り組み

GMOのテレワークに関する取り組みの大きな流れは、次のようになっています。まだ、深刻に捉えている企業が少ない中で、1月下旬に全グループ社員を対象に、在宅勤務体制に移行したのは、かなりスピーディな判断でした。そして、その後も矢継ぎ早に施策を展開しています。

  • コロナ以前:東日本大震災をきっかけに本格的なBCP(事業継続計画)を策定。毎年、在宅勤務の訓練をしてマニュアルを準備。
  • 1月27日:新型コロナウイルスの感染拡大に備え、グループ全体で在宅勤務体制に移行
  • 2月3日:在宅勤務状況に関するアンケートを実施
  • 2月25日:オンラインでの採用選考を開始
  • 3月30日:定時株主総会をネット中継をして実施
  • 4月1日:Zoomでグループ入社式を開催
  • 4月6日:平時に戻った後も週5日勤務のうち、2日程度の在宅勤務をグループ従業員に推奨すことを決定。フリーアドレスのオフィスと組み合わせることで将来の家賃を40%削減する方針も確認。
  • 4月15日:「お客様手続きの印鑑を完全に廃止・契約は電子契約のみへ」とするリリースを発表。印鑑廃止を宣言

GMOは何が優れているのか?

では、テレワーク先進事例として、GMOは何が優れているのしょうか。一言でいうならば、大胆かつ繊細・緻密な判断と運用を行なっている点だと思います。

テレワークの限界(デメリット)も理解した上で、運用していく

GMOは、テレワーク活用に積極的ですが、何から何までテレワークでうまくいくとは考えていません。例えば、熊谷社長はインタビューで次のように答えています。

例えば4月1日入社の新卒は在宅のままでは組織の一員になれないですよね。やっぱりコミュニケーション、飲みニケーションも重要ですから。ずっと続くのはだめだと思うんです。今、在宅がうまくいっているのはマニュアルを作ってツールを使いこなしているからだけではありません。一定期間、コミュニケーションの貯金ができている人たちだからというのもあるでしょうね。

出典)日経ビジネス2020年5月1日号より

テレワークでは代替が効かないリアルのコミュニケーションの重要性を正しく理解した上で、今後の運用方針を考えている訳ですね。

社員の意見(気持ち)を拾い、大切にする

また興味深いのは、社長がいけいけどんどんに見えますが、実は社員(従業員)の意見をとても大切にしているということです。GMOでは、在宅勤務への移行後、少なくとも2回、全社に対して在宅勤務状況に関するアンケートを実施し、テレワーク運用の課題の把握に努めています。そして、その結果も公表しているのですね。

ここで上がってきた社員の意見は、熊谷社長も確認して、施策の判断に生かしています。例えば、次のようなこともおっしゃっています。トップが独断で判断するのではなく、ちゃんと社員への目配り・気配りがあってのことなんですね。

一方で、在宅勤務に関するアンケート結果でわかったのは、組織において、在宅、リモートワーク=全員がハッピー、というわけではないことでした。意外だったのが「寂しい」とか「孤独感」で、それがストレスになっちゃうというケースがあったのです。これは全く想定外でした。(中略)なので一概に在宅勤務を強制させたり、リモートワークだけにしてしまうという判断も良くないなと。業種や生活スタイル、家族構成などで適切な働き方を組み合わせていくことが重要です。

出典:【GMO熊谷】僕が、超速「4000人リモート化」で掴んだ秘訣

トップがリーダーシップを発揮し、スピーディに方針を決める

一方で、トップにしか決められない大胆な方針をスピーディに打ち出している点も見逃せません。
まずは、熊谷社長は、フリーアドレスのオフィスと組み合わせることで将来の家賃を40%削減する方針を打ち出しました。

在宅勤務を通常時の体制にも組み入れることにしました。週5日勤務のうち1日から3日、グループの推奨としては2日を在宅勤務にします。これにオフィスのフリーアドレス化を組み合わせることで、未来の家賃コストを40%削減できるようにします。削減分のうち50%は従業員に還元し、50%は利益計上するという考え方です。

出典:日経ビジネス2020年5月1日号より

そして、自身のツイッターで、脱ハンコ宣言もされ、プレスリリースも出しましたね。

GMOインターネットグループ
お客様手続きの印鑑を完全に廃止・契約は電子契約のみへ
~印鑑による出社対応を不要に~

こうした取り組みはトップダウンでないとなかなか打ち出せないはずですし、何よりも日本社会全体にポジティブな影響をもたらす取り組みになるので、素晴らしいですね。