アートディレクターの佐藤可士和さんは、その効率的な仕事術で大変注目されているビジネスパーソンの一人ですが、偶然読んだプレジデントのインタビュー記事で、関心させられることを仰っていたので紹介したい。

■PJのリスクを説明することは義務

キリンビールのCMで、松本幸四郎さんと市川染五郎さん親子がビールを片手に語り合うシーンが流れますが、実はあれには台本はないらしい。ビールのシズル感をだすためには、生=リアルであることが重要と考え、ただ1時間半ほどしゃべってもらった。そしてその中で、ぽっと「最近娘がよめにいっちゃってさ」
というリアルな親心を表す言葉につながったとのこと。

ただ、企画段階においては、どういう内容になるかは撮ってみないとわからない。このCMは先が読めないところに面白みがあり、リスクもある。このリスクを承知してくれれば一緒にやりましょう。

こんな伝え方をしたそうです。

お客様相手に、核心的なリスクを伝えることはPJを発注してもらえなくなる危険性もあるわけで、非常に悩ましい問題ですが、佐藤さんは”義務”だと言い切っています。

■仕事上の駆け引きはしない

次は、ユニクロの柳井社長とのお話。NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」の出演を契機に、柳井社長と会談の機会を持つことになり、その時に「最近のユニクロをどう思うか?」と聞かれたそうだ。佐藤さんは「何か気の利いたことを言わないといけない」と思い、会談の前に都内のユニクロを数店舗まわってみることにした。しかし、何も浮かんでこなかった。

だから、柳井さんの質問に対して「ユニクロを数店舗みたけど、何も思い浮かばなかった。きっと最近のユニクロはフォーカスがぼけているのではないでしょうか。以前ならばもっとユニクロについてしゃべることができたと思います」と率直に伝えた。これが柳井社長の琴線にふれ、NYにつくる旗艦店のトータルディレクションの仕事を発注したもらうことにつながった。

相手の仕事に敬意は払うが、言いにくいことを言うのも仕事であり、不必要な駆け引きをすることはしないと言い切る。

佐藤可士和氏のプロフェッショナリズムどちらも簡単そうで、簡単にはできないこと。
佐藤可士和さん、かっこいいねぇ。