今日のEntrepreneurial Financeの授業は、銀行からの借入についてがテーマ。コマーシャルバンクにて数十年間融資を担当し、人の名前は忘れるが、会社の財務諸表は頭にこびりつくというおばさまが、ゲストスピーカーとしてきてくれた。

以下、彼女のお話。
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「銀行はリスクをとらないとよく批判されるし、それはその通りである。しかし、あなたが起業家なら、銀行のビジネスモデルを理解し、何故リスクをとらないのか(とれないのか)を知っていなければならない。銀行家のマインドセットを理解せず、銀行からお金を借りてはいけない。

銀行のビジネスとは、個人・法人からお金を預かり、(基本)企業へお金を貸すビジネスである。そのスプレッド(金利差)は平均すると4%。つまり、Gross Margin(粗利)4%のビジネスである。この4%の粗利で、固定費・変動費・ロスの全てを賄った上で、利益を出さなければいけない。

このような商売をしていて、あなたは、我々にリスクをとる余裕があると思うだろうか? 考えてみて欲しい。仮に1,000万円の融資が焦げ付き、回収不能になったとする。この損失を補うためには、新に2億5千万円の融資先を見つけ、1年待たなければいけない。リスクを取れるはずがないのだ。

なので、銀行はありとあらゆる手段を使って、リスクを回避する。貸したお金が100%回収できるようなスキームを作る。そのためのスキームが、Loan Agreement(融資契約)だ。売掛金、在庫、固定資産を担保にいれるのは当たり前。個人保証も基本的に求める。金利やその他条件は、当該ビジネスの実績(過去のHistory)次第で決まる。

個人保証を求める理由は二つ。実際の担保としての意味合いと、借主(起業家)個人に、借入金返済のコミットを負わせること。そうすることで、銀行としての貸し倒れのリスクを減らすことができる。現在の景気状態で、アメリカの銀行で個人保証を求めない銀行は存在しないし、実際85%の企業が個人保証付で借入をしている。

驚くと思うが、企業への融資を行う際に、実は、銀行は、企業自体の与信ではなく、オーナー(起業家)個人の与信(Credit)を見ている。アメリカでは全ての個人に、クレジット・スコアとクレジット・ヒストリーがくっついている。あなたのCreditが低ければ、企業として借入はできない

LLC(有限責任会社)だと企業の債務は、個人から切り離されると解釈されているが、現実は違う。あなたが起業家なら、あなたが個人保証をしなければいけない。個人保証したくなければどうしたらいいか? それは簡単なこと。銀行からお金を借りなければいい。

企業の規模が大きくなると、銀行は個人保証を求めなくなるかというと、必ずしもそうではない。規模の大小ではなく、その会社の実績や安定性、返済歴、利益率の高さなど総合的に判断される。公開企業で数多くの株主がいる場合はないが、公開企業でも大株主がオーナーであれば、オーナーに個人保証を求めることになる。

銀行家は、何百、何千と多種多様な企業の案件を見てきている。だから、彼らにとって何がmake senseで、何がそうでないかという基準(感覚)ははっきりしている。銀行家が納得できるように、過去の実績を踏まえ、合理的・現実的な計画を根拠に基づき話さなければ、融資は成立しない。

あなたが銀行から借入をする際、後でそんなことは知らなかった。そこまで理解していなかったと後で弁解して通用する世界ではない。あなた自身が、融資契約の中身を理解し、そのリスクを踏まえた上で、サインする必要があることを肝に銘じて欲しい。」
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というような話をしていただきました。非常にリアルティーのある話で、ためになった。要は事業が軌道に乗り、キャッシュフローが安定化するまでは、銀行から金を借りちゃいかんという事ですな。逆にいうと、アーリーステージでは、どんだけエクイティを調達できるかが、勝負になるということ。