コロナ・ウィルスの世界的流行で、世界は未だかつてない不安定で不確実な時代に入りました。
日本でも毎週のように社会情勢が刻々と変わるので、来週がどうなっているのかが読めません。ましてや、1年先なんて、どうなっているか皆目見当がつかないという状況ではないでしょうか。
3ヶ月前には信じられないような状況になっているわけですが、このような状況において、為す術もないと手をこまねいている経営者と、こういう時だからこそ将来に向けての準備・仕組みを淡々と進めていく経営者とでは、やはり企業の将来は大きく変わってきます。
というわけで、本日は、現在のような不確実な事業環境において、有効な経営ツールといえる「シナリオ・プランニング」を紹介したいと思います。
シナリオ・プランニングとは
シナリオ・プランニングとは、潜在的な要因を含め、起こりうる将来の事業環境についての認識をシナリオ化しておくことで、シナリオに応じた対応策を適切なタイミングで講じられるようにする経営ツールです。
シナリオ・プランニングを活用して事業戦略を策定することは、環境変化に対する感応度を上げ、たとえシナリオが完璧に適合しなくとも、経営者を含めたスタッフのプランニング能力を向上させることにつながります。
言い換えると、シナリオ・プランニングは将来を予測するためのツールではなく、不確実な未来において、より確からしい経営判断をより早く行うため、つまり、経営判断の精度とスピードを上げるためのツールなのです。
シナリオ・プランニングはどのように進めるのか
シナリオ・プランニングの進め方としては、まず業界をとりまくリスク要因を把握し、各リスク要因のインパクトを可視化した後に、環境シナリオとして、2~4のシナリオ(一連のストーリー)を作成します。
現状でいえば、コロナショックによるマクロ経済環境の悪化が、重要なリスク要因の一つとなるでしょう。
シナリオ・プランニングは、自社が認識しておかなければいけない、現実的かつ説得力のあるシナリオを複数(2つから4つまで)作り上げることが、重要なポイントになりますので、自社の業績に与える影響度が大きい要因(リスクファクター)をしっかりと整理することが大切です。
複数のシナリオは、楽観的なシナリオ、中立的なシナリオ、悲観的なシナリオと、それぞれバランスが取れていなければなりません。また、シナリオの数としては、2つ、ないし、3つがオススメです。4つはぎりぎり有りですが、シナリオ数が多くなると、その分扱うためのハードルが高くなります。
次に、ストーリーとしての環境シナリオを規定した上で、楽観シナリオに対する基本戦略(最も蓋然性の高いシナリオにおける戦略)を策定します。多くの場合、最も蓋然性の高いベースシナリオは、今見えている世界の延長なので、楽観シナリオとなります。この楽観シナリオにおいて、内外環境分析をしっかり行なった上で、マーケットセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングを検討・具体化していきます。
その後に、その他シナリオにおける戦略オプション(他シナリオ時の戦略)を策定します。その他シナリオは、ベース(楽観)シナリオと比べて、より情勢が悪くなる(リスクが顕在化する)場合のシナリオです。この時に、ベースシナリオと比べて、戦略的に何を追加で行うのか、何を行わないのかを予め検討し、施策レベルまで落とし込んでおきます。
こうすることで、経営陣の脳内シミュレーションを事前に回しておくことになるので、実際に外部環境がさらに悪化した場合に、より早く確からしい経営判断をスムーズに行うことにつながるというわけです。