最近、本屋でIFRS(国際会計基準)に関する特集記事や専門誌を多く見かけるようになりました。今までそこまで気にかけてなかったのですが、中身をよくよく知ると、今までの常識的に使われていた日本の会計原則が大きく変わることになり、日本企業へ与えるインパクトが非常に大きいことが分かったので、ここで少し整理してみたいと思う。

IFRS(アイファース、アイエフアールエス、もしくは、イファースと呼ばれ、統一的な通称はまだ決まっていない)は、ヨーロッパ企業を中心に世界で110カ国以上が採用する国際会計基準。EUは、2005年に上場する5,000社に強制適用しました。一方日本は日本基準、米国は米国基準と、主要国では日本と米国だけが独自の会計基準を採用している実態があったのだが、会計基準の世界共通化の流れをうけ、米国のSECは(米国証券取引委員会)もIFRSの採用を義務付ける方向性で議論を進めており、日本も同様の方向に向かっている。

具体的には、日本は2012年に上場企業にIFRSを強制適用するかどうかを判断、決定すれば2015年か2016年に強制適用が実施されることとなる。つまり今から5年で、全ての上場企業は今まで慣れ親しんだ日本の会計基準を捨て、IFRSに切り替えることが求められるのだ。また2010年3月期から任意適用が可能となっており、先んじてIFRS基準で財務諸表を作成する企業も出始めている。

では、IFRSの適用で何が変わるか。以下、私が思うところの特に重要な変更点。

1.「経常利益」の概念(勘定科目)がなくなる。

2.損益計算書の純利益の下に、「包括利益」という新しい利益概念(勘定科目)が加わ
る。(包括利益は、純利益に、企業が抱える資産(為替や株式、土地など)の時価評価変動分を加えたもの)

3.「特別利益」、「特別損失」がなくなる。

4.減価償却費の計上方法(定率法か定額法)の選択基準が厳しくなる。

5.M&A後に発生する「のれん代」の償却が不要になる。

他にも様々な変更点があるので、その概要については、こちらを参照。

6月7日号の日経ビジネスにて「IFRSが壊す日本的経営」と題した特集記事が組まれており、その中で監査法人アヴァンティア日経ビジネスが共同で行ったフランス企業へのアンケート調査の結果が公開されている。

IFRSを導入する際に苦労したこととして、「社内の業務・ガイドラインの作成」「会計処理方法の判断」「採用した会計処理の説明資料作成」全体の9割弱を占めている。これは日本においても、当事者企業は何らかの支援が必要になってくることを示唆している。

内部統制制度の導入の際もどうだったが、上場企業は制度変更に伴う準備・施行を計画的に進めなければいけないため、ここから先5年はある意味業界関係者にとって、IFRS特需が生まれる可能性が高い。会計系コンサル、システム系コンサルにとっては、上記の苦労点への支援およびシステム変更・刷新が格好のビジネスのネタだ。昨日、国内大手コンサルでも一部IFRSネタで仕事を作ろうとしているという話を聞いて、もはや業界の一大テーマになりそうだ。

当然いろんな人たちがビジネスをしたくて話を広げるので、現場の経理・会計責任者(担当者)の間にいろんな誤解も生まれてくる。そうした中、面白いのが、金融庁が「国際会計基準(IFRS)にという関する誤解」という資料を公開していること(苦笑)。興味のある人は、是非読んで下さい。

次に、上記の変更点が企業経営に与えるインパクトについて考えてみたい。