前回の続きです。

4.減価償却費の計上方法(定率法か定額法)の選択基準が厳しくなる。
今までは、減価償却費の計上方法としして、定率法か定額法を選ぶかは企業側が自由に選ぶことが出来た。減価償却費をどのように計上するかで、利益額は変わるので、納税額を調整することが可能となっている。しかし、IFRSでは、実態に合わせて定率法か定額法を選ぶこととなっており、定率法の選択が難しくなることが予想されている。
企業経営者にとってはいい話ではないが、決算書の客観性・正確性という観点からいうと、この変更は筋が通っていると思う。経営側が恣意的に減価償却費の配分を決めてしまうよりも、実態に合わせてという方が、決算書の信頼性が高まり、株主にとってメリットが増える

5.M&A後に発生する「のれん代」の償却が不要になる。
のれん (goodwill)とは、企業の買収・合併時の、「買収された企業の時価評価純資産」と「買収価額」との差額のこと。欧米と日本では、この「のれん」の扱いについての考え方が異なっており、米国会計基準でも国際会計基準においても、のれんの償却は基本的に禁止されている。一方日本では、のれん価値の持続すると思われる期間(20年以内)にわたり規則的に償却し、各期の償却額は販売費及び一般管理費として計上することになっている。よってIFRS適用後は、日本においても、M&Aで発生するのれんは原則償却されず、永続的に資産に残ることになる。
これにより、今まで、多額のプレミアム(=のれん代)を払って企業買収した場合は、その後そののれん代を毎期償却しなければいけないので、長期的な減益要因となる。つまり、過度にM&Aに依存した成長戦略をとると、売上は拡大しても利益は伸びないので、市場からは評価されないということになる。しかし、のれんを償却する必要がなければ、減益要因が発生しないため、利益は目減りしない。よって、少しでもシナジー効果が見込めるのであれば、M&Aしたほうがいいということになる。つまり、このIFRSの会計基準は、M&Aを奨励する考え方だといえる。
こののれん代についての考え方は、欧米のものと日本のものでは根本的に違うので、どっちがよいかという議論は難しい。但し、日本企業の多くは国内市場に留まらず、戦略的に海外にでていく必要性が高いことを考えると、この会計基準の変更を追い風として捉え、より積極的にM&Aを活用していけばいいのではなかろうか。