前回、「データとデジタル技術の活用」とは、次に挙げる4つのデジタル化の推進であると考えていると触れました。
- コミュニケーション(情報流通)のデジタル化
- フロント業務のデジタル化(=ビジネスモデルのDX)
- バックオフィス業務のデジタル化
- 経営(経営管理)のデジタル化
今回は、「コミュニケーション(情報流通)のデジタル化」について考察したいと思います。
コミュニケーション(情報流通)のデジタル化のインパクト
まずは、コミュニケーション(情報流通)のデジタル化の全体像を整理したい。
(※必ずしも、人対人の意思疎通だけでなく、組織全体の情報共有の視点も含めるために、情報流通という言葉も付記している)
コミュニケーションは、大きく下記2種類があり、デジタル化が進むことで、どのようにコミュニケーション(情報流通)するかが変わる。
- 同期型コミュニケーション:ミーティング、電話、セミナーなど → WEBミーティング、電話、ウェビナー
- 非同期型コミュニケーション:FAX、メール、社内報など → インターネットFAX、メール&ビジネスチャット、社内wiki
もちろん、いままでのコミュニケーション(例えば、顔を合わせたミーティング)が無くなることはないが、face to faceのミーティングとWEBミーティングの割合は変わってくるはずだ。
そして、そうしたコミュニケーションスタイルの変容により、「移動時間のゼロ化」「場所からの解放」「業務スピードUP」「情報流通の正確性&検索性&流通性UP」というメリットが得られると思う。
同期型コミュニケーションのデジタル化
同期型コミュニケーションがデジタル化することでメリットは、「移動時間のゼロ化」と「場所からの解放」だ。
例えば、社外とのミーティング(週1回、移動に往復2時間)をオンラインで済ませるようになると、ざっくり月にⅠ人日(2時間×4回)浮くことになるので、この時間を別の作業に当てられるようになる。月40万円の社員であれば、年間24万円の無駄を削減することになる。社員が100人いれば、年間2,400万円のコストインパクトだから、強烈だ。
場所からの解放は、参加者はどこからでも参加できるようになり、主催者は場所を確保する必要性が低くなる。会場の関係で50人までしか参加できないセミナーは、ウェビナーに変えることでより多くの人数を集客できるようになる。
また、テレワーク社員が増えれば、従来のオフィススペースを2割〜5割程度削減するといった会社が出てくるだろう。
非同期型コミュニケーションのデジタル化
次に、非同期型コミュニケーションがデジタル化することでのメリットは、「業務スピードUP」と「情報流通の正確性&検索性&流通性UP」だ。
日本の多くの製造業や商社では、いまだ受発注ではFAXを利用しているところが多いが、その実務的な不都合さからインターネットFAXに置き換わっていくだろう。FAX受発注は商慣行として広く根付いているため、スイッチングコストが高くなってしまっているが、FAXという機械の物理的な場所に制約されるし、情報の共有性も即時性も正確性(事後的な確認容易性)も難がある。そうした点から、FAXがデジタル化(インターネットFAX化)しない理由はないだろう。
Slackをはじめとするビジネスチャットツールが急速に普及してきているが、ビジネスに与える影響は実に大きい。今まで社外とのやりとりはメールベースが多かったため、やりとりに数時間からⅠ日程度のラグが毎回発生していたが、ビジネスチャットに移行すると、それが数分から数時間に収まる。社内にしても、社外にしても、コミュニケーション頻度(回数)が圧倒的に増えるため、コラボレーションが進み、生産性や業務スピードが改善する。
私も社外とのプロジェクトでSlackを利用しているが、コラボレーションのスピードが上がっている実感は十分にある。
社内全体に共有したい情報は、回覧式の社内報だけでなく、イントラネットを使っている会社は多いだろう。情報が紙ではなく、既にデジタル化されているとも言えるが、組織全体のナレッジマネジメントとしての昨日は脆弱だ。
NotePM、Confluence、Qiita:Team、esaなどの社内wikiツールを活用することで、情報流通の正確性&検索性&流通性を改善することができる。特に、旧来型の組織では、情報が属人化(ブラックボックス化)されやすいため、それを組織全体に流通させるための仕組みは重要だ。