今回は、業務効率化の要である「バックオフィス業務のデジタル化」について考察していきたい。

バックオフィス業務のデジタル化とは

バックオフィス業務とは、一般的に経理や総務、人事、法務、財務などといった「顧客と直接対峙することの無い」社内向けの業務のことです。組織運営上必ず実施が必要な業務や、法令で実施が義務付けられた業務もあります。

機能としては、経理・財務、人事・労務、総務、法務、システムが一般的で、あとは、企業によっては経営企画や社長室などがあるかと思います。その中の業務種別を大別すると、①企画系業務、②運用系業務(非定型)、③運用系業務(定型)に分けることができると考えています。
それぞれの業務種別において、デジタル化の方向性が変わってくるはずなので、考えていきましょう。

①企画系業務

企画系業務は、人が考えることにより、方針や制度(ルール)を立案・設計する類の非定型業務です。アウトプットが決まっていないものを創っていくクリエイティブな業務なので、機械やプログラムが代替することはできず、誰がやるかによって、アウトプットの質も大きく変わります。

こうした企画系業務に、デジタル技術が貢献できる余地はないと考えがちですが、決してそうではありません。人が企画系業務にてアウトプットを創出するためには、必ずインプットが必要であり、アウトプットを出すためのプロセスが発生します。

例えば、新しい人事評価制度を企画・立案するとします。この場合、担当者の想い一つで制度設計するわけではなく、会社で働く従業員の置かれた現状や意識を含めた課題の全体像を把握する必要があります。そのためには、ネットアンケートツールをつかった従業員意識調査を行えばスピーディに全容の把握ができますし、wevoxのようなパルス調査を行なっていれば、組織課題の把握にもつながります。

メインのアウトプットを創出する役割は個人に依存しますが、デジタルツールを適切に活用することで、求められているアウトプットを出すための質やスピードの向上につなげることができます。

②運用系業務(非定型)

運用系業務(非定型)とは、繰り返し実行が求められるのですが、必ずしも作業を定型化(マニュアル化)できない業務です。たとえば、法務における契約の更新業務。毎年、契約更新が発生する保険契約などは、会社の状況が変わっていれば、確認するプロセスや判断基準が変わる可能性があり、担当者はそうした状況変化を踏まえて、一定の判断をしながら、運用を回していく必要があります。

こうした運用系業務(非定型)は、デジタル化・クラウド化の対象として対応をしていくべきです。紙での作業(ペーワーワーク)が発生する、オフィスでしかできないというアナログ系作業は、作業生産性が高まらず、作業の属人化や、非常時の業務停滞のリスクがあります。

最近話題のハンコ・契約書の電子化もそうですし、経理ソフトや経費精算システムのクラウド化などもそうです。デジタル化することで紙自体の保存をなくし、クラウドで管理することで、働く場所からの解放され、業務効率の改善と業務運営上のリスク低下につながります。

③運用系業務(定型)

運用系業務(定型)とは、毎週や毎月繰り返し行う業務で、やるべき手順が定型化(マニュアル化)が可能な業務です。例えば、毎月の振り込み処理や、給与計算、各種管理帳票の更新業務などです。

こうした業務は、作業内容およびアウトプットが固定化されているため、誰がやっても結果は同じ、もう少し言うと、本質的には人がやる意味がほぼない業務と言えます。よって、こうした運用系業務(定型)は、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)により、自動化するべき業務となります。

RPAは、ホワイトカラーのデスクワーク(主に定型作業)を、ルールエンジンやAI(人工知能)などの技術を備えたソフトウェアのロボットが代行・自動化することで、時々によって一定のメンテナンスは必要ですが、一旦導入すれば、あとは決められた通りに作業代行が行われます。よって、それまで人が関わっていた工数がゼロになるので、より生産的な業務に振り当てることができるようになります。

バックオフィス業務では、こうした運用系業務(定型)が実はかなり多いため、積極的にRPAを導入していくことで、全体として大きな工数(→人件費)の削減につなげることは可能になるでしょう。