今の時代に強いトップ像というものを考えた場合に、先ほどは「社長の現場コミット力」と書いたけれど、誤解を恐れずに言えば「ワンマン的経営スタイル」が強いのだと考察している。
ちょっと前まで(というか今でも)は、経営方針として権限委譲することはいいことだと考えられている。裁量が大きい方が、部下はやる気を出し、成果を出すからだ。
まぁ必ずしも「ワンマン的経営スタイル」と「権限委譲」がトレードオフの関係にあるとは思わないのだが、でも今は「ワンマン的経営スタイル」が求められているのだと思う。
その理由はいくつか挙げてみたい。
1)市場の変化のスピードが速く、合議制だと追いつけない。
経済のグローバル化、インターネット、自由市場化、資本市場の巨大化などあらゆる理由で、市場が変化するスピードはいつになく早まっている。スマートフォンはいい例で、ある時、(携帯電話)市場の流れが変わる。そこを読み取れれば、孫さんのようにアップルのiPhoneという勝ち馬に乗れるし、読み取れなければKDDIのようにぐだぐだ議論している間に取り残されてしまう。トップが機敏に動かなければ、今の時代勝ち続けることが出来ない。
2)業界(市場)の境目がなくなってきており、事業戦略の整合性・一貫性の重要度が高まっている。
アップルやアマゾンが顕著な例だが、今まであった業界(市場)の境目がなくなりつつある(分かりにくくなっている)。よって、個別事業の最適化だけを考えていては、企業として機会損失を生むリスクが高くなる。スティーブ・ジョブズが素晴らしかったのは、音楽プレイヤーから始めたiTuneをプラットホームとして、映画・書籍・ラジオ・教育・アプリへと手を広げていったことだ。経営トップが絶対的なコントロール力を持ってなければ、あの規模の会社で同じことは出来ない。(残念だが、ストリンガーCEOでは、SONYの事業本部をコントロールすることは無理だろう)
社長はワンマンが良い!?3)トップの直接的なコミットが、企業の競争力を高める。
「偉大なリーダーは、偉大な教育者でもある」というが、社長が直接的に商品開発の現場の最前線に関わることが、社員を興奮させ、さらなる高みへと突き進ませる。勿論、トップがどのように時間を使うかということのバランスは大切だ。だが、部下からも、顔が見え、語り合え、人間味が伝わってくるリーダーが身近にいたほうが、社員はやる気をだし、いい仕事をするものだ。私の前職では、社長と社員との距離はすごい遠いものだったと認識しているし、多くの企業において皆同じように感じているはずだ。社長自ら、社員を指揮し鼓舞できるかが、差を生み出しているのだと思う。Facebookのザッカーバーグは、社内の500人のエンジニアと同じフロアで机を並べ、社長というより、一社員的なスタンスで仕事をしている。おそらく、彼の頭の中で”マネジメント”が占める部分は1割以下ではないだろうか。