昨年9月にMBAが始まってから、各Moduleで最低5人ほどは新しい教授に入れ替わるので、ここまで15人から20人弱の教授陣から教わったことになります。元々1年目でこれだけ多くの教授と接することになるとは思っていなかったので、これは非常に喜ばしいこと。

ただ、優秀な学生がいればそうでない学生がいるように、(ぶっちゃけ)秀でた教授もいれば、特段目立たない教授もいます。優れた教授は、学生に対して教える内容(WHAT)のレベルが高いのは勿論ですが、どのように教えるか(HOW)という点でも学ぶ点が非常に多いです。

ビジネススクールにおける教授達は、Teaching ProfessorとResearch Professorの2系統分かれるというのを聞いたことがあります。Teaching Professorは、学問としての経営学を追求するよりも、経営学を教える技術に重きを置いているので、教え方はかなり洗練されているのですね。

現在マクロ経済の授業があるのですが、担当教授はJohn E. Marthinsenというダンディなおじさんです。彼は、マクロ経済というなんとも退屈しそうな内容を、興味深くかつ分かりやすく説明してくれるので、特に尊敬している教授の一人なんですが、教え方は本当に一流です。

ここでは、できそうでできない(完璧に実践している教授は少ない)一流の教授のHow to Teachをマーティンセン教授を題材にまとめてみたいと思います。

1.教科書は自分でつくる
マーティンセン教授の何がすごいって、バブソンの学生のために自ら教科書をつくったこと。タイトルは”Managing in a Global Economy”という要はMBA生向けのマクロ経済の教科書(700ページ!)なんですが、主としてビジネスパーソンが知っておくべきマクロ経済の基礎を分かりやすくかつ体系的にまとめてあります。脱帽です・・・

2.綺麗な言葉で、ロジカル、かつ、丁寧に話す
マクロ経済は、勿論経済学用語が出てきますので、内容的にはやや難しめの英語のはずなんですが、彼の話す英語は非常によくわかる。スラングなどはほぼ使わず、きれいな標準語で話すし、ロジカルな説明をするので、留学生の私でも95%は理解できています。International Studentの英語の理解力というのを十分に考慮しているのです。

3.学生の顔色を読み、説明の仕方・スピードを調整する
一方通行の教え方はしません。常に55人の学生の顔色をみながら、どれくらい理解できているかを把握しています。学生があまりついてこれていなかったり、疲れの色がでていたりということであれば、スピードを緩め、教え方を柔軟に変更します。

4.15分~20分置きに質問はないかと尋ねる
自信の表れだと思いますが、こまめに学生に質問がないか?と尋ねてきます。これは、教授が一方的に話し続けると、学生が疑問に思ったことがあっても、質問する機会を逸してしまうことがあることを知っているからです。

5.学生の質問に対して、意図を読み、真正面から回答する
学生の質問は、時として趣旨がわかりにくい場合があります。だけど、マーティンセンは、学生が本質的に何を聞きたいを理解します。そして、質問の意図はこういうことだと、簡潔にまとめ言い直します。そして、答えはこうだと、ストレートな回答をします。(変に逃げるような回答はしません)

6.(いい意味で)学生をびびらせ、プレッシャーを与える
MBA生といえど、人間なので、ほっとくと怠けます。教授が生易しいと、勉強もほどほどにしかしなくなります。なので、マーティンセンは学生に高い要求をしてきます。宿題の質問に答えられなかったら、そのクラスのパーティシペーション(貢献度)はSBS(落第点)だ!とびびらせ、学生に発破をかけます。

7.板書は読みやすい字で、常にゼロから
まぁ、当たり前といえばそうなのですが、読みにくい筆記体で書くことはありません。読みやすいです。また、クラスが続く場合は、最初の授業の板書を残しておくことで、次クラスでも同じものを使えるのですが、マーティンセンはそんなことは絶対しません。黒板は全て綺麗に自分でまっさらに消して、次授業は全くのゼロから再び板書を行います。妥協はなしです。

8.宿題を必ず与え、学生に考えさせる
何事も自分の頭を使って考えなければ、身につきません。なので、マーティンセンは授業前の宿題を必ず与えます。そして、週末には確認テストとして、グレードとして評価されるオンラインテストも用意しています。このオンラインテストは、1000問以上あり、難易度別にランダム出題されるというこだわりの一品です。

9.授業の最初は、前回の復習から
新しいことを学び、定着させるためには、反復するしかありません。なので、マーティンセンは授業の最初に必ず、前回クラスのおさらいをします。そこで、重要なポイントが何だったかを繰り返すことで、学生の習得レベルを高めるのです。

10.ジョークを交え、場を和ませる
一流の教授は、堅物ではありません。人間的にも魅力的なんですね。マーティンセンも時折ジョークを挟みます。(私には)半分くらいわからないときがありますが、けっこう面白いこと言っています。ジョークが上手い教授は、学生の人気者になります。

以上、マーティンセンの10か条でした。

マーティンセンの授業の様子

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